工務店・大工の「手刻み」で建てる家「プレカット」との違いや費用は?

工務店・大工が伝える匠の技「墨付けと手刻み」

注文住宅を建てる際、部材加工を「プレカットするか、手刻みするか」。木造の家づくりについて勉強したり調べていくと、行き着く疑問のひとつではないでしょうか?
近年の木造建築では80%以上の建物がプレカットによって建てられています。
また、プレカットを利用しつつ、特殊な加工・素材の部分だけ手刻みにするという方法を取る場合もあります。

しかし「匠の技術で家を建てて欲しい」とか「天井に美しい木組みを見せたい」「日本の伝統工法のすばらしさを残したい」…そんな想いを持っているならば、ぜひ「大工の手刻みの家」を選んで欲しいと思います。

なぜ、手間暇をかけて手刻みをするのでしょう?

木造の注文住宅における「手刻み」って何?

墨壺と差し金

在来工法では梁や桁、柱などそれぞれの材の接合部に「継ぎ手」や「仕口」という凹凸加工をほどこし、それを立体パズルのように組み上げ、家の骨組みをつくります。

昔ながらの伝統技術を受け継いだ大工は、用途によって木材を選別したり、捩れや曲がり、歪みを調整する技術を持っています。一本一本の材料に墨を付け、ノコギリや鑿(のみ)を使って手作業で加工を行う工程が「手刻み」と呼ばれます。

「刻み場見学」の様子。これから迎える上棟を前に、家の構造部材と大工の技を見つめる施主

伝統技術を習得した大工だけができる技

大工は製材所から届いた木材を並べ、どこの場所にどの向きで使うのか決めていきます。
それぞれの材がもつ特性を活かして、次のようなことに気を配りながら適材適所に番付をしていきます。

  • 横架材(梁や桁)は木の根元を外に向けて使う。
  • 垂直材(柱など)は木材の根本を下にして使う。
  • 乾燥によって曲がりそうな材料は、乾燥とともに家が内側に締まっていくように使う。
  • 大きな節があるなど見た目が悪い部分はなるべく見えにくいところで使う。
  • よく見える方向に木表(きおもて)が来るように使う。
  • 大きく色が違う材料が隣り合わせにならないように木配りする。

このような材の判別や気配りは、機械にはできないことです。
それぞれの材がもつ特性を活かして、より強度を持たせたり、より美しく見せるための気配りは、家が完成してしまうとなかなか確認することはできませんが、とても重要なことなのです。

宮大工の棟梁が残した、こんな言葉があります。

「見える所は当たり前、見えん所ほど気配りせなあかん。
解体しても恥ずかしくない仕事をせなあかん。
それが建物を強固にし
百年、二百年と美しさを保つことが出来るんや」

この言葉に、すべてが表されています。

日本の土地に適した、強固で柔軟な構造を実現できる

木づちで叩く大工

仕口を木づちで叩いて差し込む

大工は現場の状況に合わせて、一つ一つの材に正確な調整をしていきます。1ミリの狂いも許されない繊細さで加工された材は、大きな木づちで何度も叩いて組み上げられ、金物なしでもビクともしません。

現在でもそうやって建てられた建築物はたくさん現存しており、地震や台風にも耐えうる強固で柔軟な構造を可能とした、伝統技術のすばらしさを今日に伝えています。

接合部(仕口)の目的は単に接合するためだけでなく、意匠的にすぐれたものが多く、多種多様の仕口があります。

手刻みでないと実現できない工法もたくさんある

伝統工法の「渡り顎工法」「石場建て工法」「書院造り」「社寺建築」などは、手刻みでないと実現できません。
以下に挙げる、「曲がり梁を使った渡り顎工法」などはプレカットでは実現できない工法の代表的な例です。

曲がり梁を使った渡り顎工法

梁や垂木を見せる手法

手刻み加工の美しさのが際立つ、木組みのあらわし

対する「プレカット」とは?手刻みとの違いやメリット

「プレカット工法」は昨今の日本住宅のスタンダード

プレカットとは「pure cut=あらかじめカットしておく」という意味で、数ある継ぎ手・仕口の中から機械で加工ができるものを簡素化し、工場でコンピュータと機械を使って一気に加工することで、短時間で高精度な加工ができます。そうしたコスト面や合理性から、現在ではプレカット工法による集成材、人工乾燥材を使った住宅が大半を占めています。

数ある継ぎ手・仕口のうち簡素化したものを、工場でコンピュータと機械を使って一気に加工するプレカット工法

安定した品質の木造住宅を大量生産できるシステム

プレカット工法では、一つ一つの材の特徴を見極めたり、捩れや曲がり・歪みを調整するということはありません。どの材も均一の木材として工場で同一規格に加工され、現場での加工の必要がないように、接合部にもあらかじめ余裕を持たされています。
現場ではほとんど組み立てるだけとなるので、在来工法の技術を大工が身に付ける必要もなくなりました。

従来の「大工の腕で家の質が決まる」といった不安定な要素が払拭されたことで、安定した品質の木造住宅を大量に生産するシステムとして日本の住宅のスタンダードとなったプレカット工法。

加えて「集成材」や「KD材」といった材木・木質材料の技術も生まれ、日本の住宅は「匠の技」から「工場での大量生産」へとシフトしたのです。

手刻みとプレカットのメリット・デメリットまとめ

手刻みのメリット

  • 木組み・木目を美しくあらわせる
  • 梁丸太や曲がり梁なども加工できる
  • 複雑な仕口にも対応できる
  • 大工の伝統技術の継承ができる
  • 自然乾燥材を使うのに適している

手刻みのデメリット

  • 対応できる建築会社が限られる
  • プレカットと比べて工期がかかる
  • コスト面でプレカットと比べやや高い場合がある
  • 仕上がりが大工の腕に左右される

プレカットのメリット

  • 手刻みと比べて工期の短縮ができる
  • ほとんどの建築会社で対応できる
  • コストダウンができる
  • 仕上がりが大工の腕に左右されない

プレカットのデメリット

  • 木材を見極めることができない
  • 木材によって加工できない物がある
  • 複雑な加工ができない
  • 簡素化された加工で精度が多少落ちる、乾燥すると接合部ががたつくことがある
  • 大工の伝統技術の継承ができない

どちらを選ぶかは「何を優先するか」で決まる

部材の加工としてどちらを選択しても、建築基準法上は建物の構造の強度に違いはありません。
そのような理由から、コストパフォーマンス一辺倒の考え方で、手刻みは無意味だという考えもあるでしょう。 

しかしせっかく家を建てるならば、見えない内部までもしっかりと気を配って建てられた木の家に住みたい…そんなこだわりを持つことは、素晴らしいと思うのです。

まずは手刻みができる建築会社を探してみる

もし、あなたがこのコラムを読んで「ぜひ手刻みを採用したいなぁ」と思ったならば、まずは「手刻みに対応している建築会社」を探すことから始めることをおすすめします。手刻みはどこの会社でも対応できるわけではないからです。

そして、構造見学会などに出向いて両方の工法を見学してみると良いでしょう。自分にとって何が一番譲れない項目なのか、実際に現場を見ることで実感できることがあるはずです。

コストがかかると思われがちな手刻み。しかし意外と坪単価は変わらない場合も

手刻みはコストがかかると思われがちですが、ハウスメーカー等と比べると「坪単価は変わらなかった」、「むしろ下がった」という実例もあります。

コストだけでは語れない美しさや満足度を叶えることができるのが手刻みです。

建築会社によって、全て手刻みが難しいという場合もあるでしょう。例えば「リビングの天井に見える梁の一部だけ手刻みをしてもらう」などの対応ができる場合もありますので、あきらめずに相談してみるのもひとつです。

 

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