住宅の床材として人気の無垢フローリング。その美しい見た目や、足裏に触れる木の心地よさから「新築をするなら、床は無垢フローリングにしたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
無垢フローリングを選ぶときによく質問されるのが「汚れた時や傷が付いた時のメンテナンス方法」。
飲み物をこぼしたり、椅子の足で引きずってしまったり…どんなに気をつけていても、生活していればフローリングに傷や汚れがついてしまうこともあるでしょう。
そんな傷や汚れ、種類によってはDIYで簡単に補修することができます。
無垢フローリングの傷やへこみ、
どこまで直せる?
写真はどちらも無垢の桧フローリング(無塗装)。新築から数年経過したものです。
(左)家具の角などでついた引っかき傷。
(右)固い物で打ち付けて凹んでしまった傷。
この2つはどの程度補修できるのでしょうか?
さっそく補修してみましょう
用意するものは、「アイロン」「霧吹き」「汚れても良いタオル」。補修の様子を短い動画にまとめましたのでご覧ください。
引っかき傷は綺麗に消えやすい
完全に消えてなくなりました。木の繊維に沿ったひっかき傷は、ある程度であれば簡単・綺麗に補修ができます。
大きくへこんだ傷は完全には直らないことも
へこみ傷の場合は完璧とまではいきませんが、傷が浅くなり目立たなくなりました。
木は水と熱で膨張する性質を持っているので、アイロンの熱と蒸気でへこんだ傷が膨らみ、目立たなくなります。大きい傷の場合は水をかけて一晩置くなどすれば、より目立たなくなるでしょう。
ただし大きく陥没した傷やえぐれた傷は、ここまで直らない場合もあります。
フローリングにこぼしてしまった
醤油のシミ
うっかり醤油をこぼしてしまった!すぐに拭いたけれど染み込んでしまった!そんなこともありますよね。無垢だから洗剤は使えない…。こんな場合はどうなるのでしょうか?
この場合も傷補修と同じ方法で汚れが落とせます。シミの部分に水を含ませ、タオルを当ててアイロンをかけると、浮き出た汚れがタオルに吸い取られ、シミが消えます。
蒸気と熱でシミが浮き出る
シミが蒸気で浮いてタオルに染み込んだことで、フローリングから綺麗にシミが消えました。
同様の方法で、コーヒーやジュース、ワインなどの水溶性の汚れなら簡単に落とすことができます。
クレヨン・油性マジックの落書き
子供が床に落書きしてしまった!うっかりキャップを開いたまま油性マジックを落として汚れがついた!そんなこともありそうです。油性の汚れなので水やアイロンではどうにもなりません。
油性汚れは拭き取っても、当然全然落ちません。
そんなとき、無垢フローリングなら「紙やすり」が使えます。そう、汚れた部分を削り取ってしまえばいいのです!
無垢だからこそ使える最終手段。「紙やすり」で元通り!
紙やすりで削っていくと、ご覧のとおり。すっかり綺麗になりました。この方法なら油性マジックやクレヨンなど、水に溶けない油汚れも大丈夫ですね。
上記は無垢の桧フローリング、無塗装の例です。一言に無垢フローリングと言っても、樹種や仕上げによってメンテナンス方法や補修できることにも違いがあります。
続いて、フローリングの「オイル塗装」と「ウレタン塗装」の場合の補修について触れています。
オイル塗装、ウレタン塗装フローリングの補修は?
サンプルはどちらも無垢桧のフローリングですが、左がオイル塗装品。右がウレタン塗装品です。
オイル塗装とはオイル塗料は油性の塗料で、木に油分を浸透させることで木を保護し、美観を高めます。木の表面に塗膜をつくらないので、木の呼吸を妨ぎません。最近では自然塗料と呼ばれる植物油由来のオイル塗料が多く、着色目的の鉱物系顔料などを混ぜつくられています。「自然塗料」と呼ばれたり、オイル塗料を使った塗装仕上げは「オイルフィニッシュ」と呼ばれることもあります。
ウレタン塗装とは
ウレタン塗料とは、ウレタン系の樹脂を主成分とした塗料のこと。木の表面に塗膜を形成し、木を保護します。ウレタン塗料による塗装仕上げの中でも「UV塗装」や「UVウレタン塗装」と言われるものは、紫外線(UV)で照らすことで強い塗膜を形成する塗装のことです。フローリングのウレタン塗装は工場で機械的に塗布されるものが多く、DIYでは扱えません。
オイル塗装は汚れがつきにくく、無塗装と同じように補修ができる
オイル塗装の場合は、オイルで保護されるために無塗装フローリングと比べて汚れはつきにくくなります。傷が付いた場合は同様にアイロンで傷を補修することが可能です。
取れない油汚れなども、同様に紙やすりで削り取ることができますが、削ったあとに同じ色の塗料で塗りなおす工程が必要です。
ウレタン塗装は汚れ・傷に強いが、一旦傷がつくと補修は困難
ウレタン塗装は表面が固くコーティングされているため、傷・汚れともに付きにくく、汚れた場合は中性洗剤での掃除も可能です。ですが一度ついた傷は、水やアイロンを使っても元には戻りません。
ウレタン塗装のフローリングに傷がついた場合は、市販の補修用のペンなどで隠すことはできますが、それ以上の補修はDIYでの修理は難しいのです。
大切なのは、素材の特性を
良く知ってから選ぶこと
一言に無垢フローリングのメンテナンスといっても、無塗装なのか、オイル塗装なのか、ウレタン塗装なのかで方法も変わってきます。
無塗装やオイル塗装のフローリングは自然な風合いを生かして定期的にメンテナンスをすることで経年美を得られるし、傷やシミも思い出や味わいになるという考えもあります。
また最終的には削ってしまえば元の綺麗な木に戻せるというメリットがあります。
ウレタン塗装は「定期的なメンテナンスや床の拭き掃除が面倒」という方や「少しの汚れでも気になる」といった方に選ばれますが、一度大きな傷がつくとDIYでの補修は難しくなります。
また、なんといっても無垢フローリングならではの足裏の肌触りや木の香りは心地の良いものです。
夏でもべたつかず、調湿効果を得られるのは無塗装や自然塗料だからこそ。ウレタン塗装のフローリングでは表面がツルツルにコーティングされてしまうため、そういったメリットは得られません。
フローリングは簡単に張り替えることはできませんので、あとで「知らなかった!」ということのないように、それぞれの素材や仕上げの特性をよく知り、納得した上で選びたいものですね。