近年、古民家を現代風にリノベーションして住まう方も多くなっています。
古民家にはその土地の風土に適したつくりや手仕事の技術・丁寧さがあり、
今では手に入らないような立派な材が使われている建物も多く見受けられます。
「先祖代々受け継いできた古民家を取り壊すのではなく、住み継いでいきたい」といった要望に寄り添い、
現代のライフスタイルにおいても暮らしやすい空間にするために、
どんなふうに手を加えていけば良いのでしょうか。
古民家にありがちなお悩み
『夏をもって旨とすべし』とつくられた古民家は
風通しのよい構造になっており、隙間風や冬の寒さが課題となります。
また、建築基準法の改正前に建てられた古民家は、耐震面でも不安が残ります。
古民家でよくあるお悩み
- 気密性がなく、隙間風が入るため冬が寒い
- リビング(居間)の日当たりが悪く、昼間でも電気をつけないと暗い
- 間取りが使いにくい(廊下のない田の字型の間取り)
古民家で多い「 田の字型の間取り 」は、
部屋と部屋が障子や襖でしか区切られていないため、プライバシーの確保も難しい間取りです。
さらに問題なのが日当たりの悪さで、
南側に玄関や縁側があったり、家の中心に居間(リビング)があったりして、
窓が十分に取れていないと言った場合が多いようです。
ライフスタイルに合わせて暮らしやすい間取りへと変更
こちらの実例は築85年を迎える古民家。
南に玄関と仏間、西に洗面トイレ、北に台所と浴室があり、
家族が集まる居間(和室)は内部に位置しており暗い場所となっていました。
リノベーション工事で、変化したライフスタイルに合わせて減築と間取り変更を行いました。

リノベーション後
古民家特有の田の字型の間取りを変え、浴室と台所のあった北側を減築。
その分、屋根のある広いウッドデッキをつくり、外と中のつながりが心地よく明るい空間に。
そして、室内は段差をなくしてバリアフリー化し、寝室の近くにトイレを配置するなど、
将来に備えて安心で暮らしやすい住まいへと変化させました。
一旦スケルトンにして、断熱・耐震面の不安も解消

リノベーション前

工事中の様子
立派な鴨居や柱は残し、元の家の骨組みを残しながら
床下、断熱、屋根、サッシと一旦すべてをスケルトンにして断熱・耐震面の不安も解消します。
屋根や床下のコンディションが丸見えになるため、
基礎の状態やシロアリ被害がないかなどもしっかりと確認することができます。

リノベーション後
気密性・断熱性が上がったことで、夏の涼しさはそのままに、冬場も暖かく過ごしやすくなりました。
内装はじゅらく壁から湯布珪藻土へと変わり、元の家の面影を残しながら、温かみのある雰囲気に。
家電や日用品をすべて仕舞える造作収納を設置し、
生活のしやすい住まいへと変化しました。
快適な住環境を実現する古民家リノベーション
建物を一回スケルトンにするリノベーションは、簡単なリフォームに比べるとコストはかかりますが、
古民家ならではのお悩みを解決し、
古き良き趣を残しながら、安心して大切に住み続けることができます。
そして古民家では、既存の図面がないことも多く、
構造の痛み具合の把握や、どこまでリニューアルの必要性があるかの検討も大切です。
外壁や基礎、床下や屋根などの建物の劣化状況をしっかりと事前に調査してもらいましょう。